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Column

英国産ビーフ&ラム
~ 英国・湖水地方 視察旅 vol.4 ~

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~牛農家編~
「ネザー・ホール・ファーム」
◎ 100%牧草肥育で高品質なヘレフォード純血種を飼育
◎自然と調和した生産方法を追求、高水準な健康管理を維持

 イギリス北西部のカンブリア州は、「湖水地方」として人気の高い観光地で、英国の作家ヘレン・ビアトリクス・ポターの「ピーターラビット」の舞台としても知られる、自然豊かな地域だ。畜産業も盛んで、地域のいたるところで牛や羊が放牧されており、自然のなかでのびのびと飼育される姿を見ることができる。

 

今回の視察では、湖水地方にあるいくつかの農場を訪れることができた。ここでは、牧草を活用し、環境に配慮しながらも、安全かつ持続可能な畜産経営を目指す農家の取り組みを紹介する。

 

カンブリア州カークビー・ロンズデールのルーン峡谷に位置する「ネザー・ホール・ファーム」は、デヴィッド・ケリー氏と妻のマギー氏が経営する牛の繁殖農家。900エーカーと広大な牧草地でヘレフォードの純血種840頭を飼養し、年間80~100頭の厳選した種雄牛を繁殖用に供給している。農場が位置する地域は、平均降雨量が1,167㎜と多く、平均気温8.8℃と良質な牧草が生育するのに最適な条件がそろっており、飼育する牛はすべて100%牧草肥育で育てられている。

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 同農場では、獣医師と連携し、▽牛ウイルス性下痢(BVD)のタグと検査▽ヨーネ病およびBVD認定▽BVDおよびレプトスピラ症の予防接種▽牛結核(TB)検査――などさまざまな検査を行うことで、高いレベルで牛の健康管理を維持している。また、すべての子牛の体重を出生時および生後200日、400日、600日に測定するとともに、生後14カ月で胴体スキャンによる測定も行っている。このように、すべての牛の健康状態や個体データを記録しており、このデータに基づいて母牛となる雌牛は、出産のしやすさや妊娠期間の短さ、搾乳量などを基準に優良な個体を選定する。

 

また、毎年1~2月は牧草が育ちにくい時期となるためサイレージを給餌し、牧草の生育が活発化する3月から自然放牧を行っている。このため、毎年6月に種付けを行い、牧草の成長に合わせ、翌年3月から出産時期を迎えるよう、妊娠時期をコントロールしている。

英国発祥の肉専用種として世界的にも有名なヘレフォードの純血種を扱っており、デヴィッド氏はヘレフォードを育てることについて、「以前は違う品種を育てていたが、ヘレフォードに変更した。へレフォードという品種は比較的穏やかな気質で、飼育しやすいという特徴がある。肉質もサシの入った良い肉質となる。当農場では、より自然と調和した生産方法を重視しており、こうしたヘレフォードの気質は土地の性質にも合っている」と話す。

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同地域では、このように自然放牧を中心としたサステナブルな生産方法が多く見られるなか、ネザー・ホール・ファームでは1頭1頭の健康・個体管理をこまめに行うことで、安全性にも十分配慮していることがうかがえた。

文・食品産業新聞社・畜産日報部 石田氏

英国・湖水地方 視察旅

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