Column
英国産ビーフ&ラム
~ 英国・湖水地方 視察旅 vol.3 ~
SDGsへの取り組み
今回の視察旅行の訪問先も紹介しよう。
フォイル・フード・グループ(以下、フォイル社)は英国有数の牛肉加工処理工場として、40年以上にわたり高品質な牛肉を世界中に供給している。イングランドに2工場(Melton Mowbray、Foyle Gloucester)、北アイルランド2工場(Foyle Campsie、Foyle Donegal)、アイルランド共和国1工場(Foyle Omagh)の計5工場を所有し、従業員数は1,400人、処理頭数は1週間当たり7千頭に上る。契約農家から牛を直接購入し、アンガス種をはじめヘレフォード、シャロレー、リムジンなど扱う。
ここでは、フォイル社のサステナビリティの取り組みに加え、トレーサビリティシステム、最新のテクノロジーを紹介する。
フォイル社では、2019年に「サステナビリティ戦略」を立ち上げて以降、この戦略が同社のすべてのビジネス上の意思決定と運営方法の中心となっている。2015年に採択されたパリ協定に基づいて、自社独自のサステナビリティゴールを設定し、4つの“P”、①PASTURE(牧草)②PRODUCT(製品)③PLANET(地球)④PEOPLE(人)を目標に掲げている。生産農家と連携して牧草の改良などに取り組むとともに、新たなテクノロジーやパッケージング技術を導入することで、サステナブルでありながらも安全性を重視した生産体制を整えている。また、家畜による温室効果ガスの削減や動物福祉活動、自家発電による電気使用量の削減などにも積極的に取り組んでいる。
トレーサビリティシステムでは、イヤータグ(耳標)による個体管理に加え、枝肉には、牛が生まれた場所やと畜した日時、重量、グレーディングなどが記載されたラベルを貼付することで農場から食卓に届くまで厳格なトレーサビリティシステムを構築している。
トリムマネジメントシステム「センサーX」を導入
フォイル社では、世界中の顧客の要件に合わせたトリミングの仕方や加工処理などクリアすべき条件を満たすべく、最新テクノロジーへの投資を行っている。そのなかでも特徴的なのが、トリムマネジメントシステム「Sensor X」(以下、センサーX)だ。同社が英国で初めて導入した「センサーX」は現在、所有する5工場すべてに導入しているという。この「センサーX」を利用することで、トリミングの赤身含有率の測定とコントロールが可能となり、また、X線によるスキャニングで目視では確認できない、骨片やプラスチックといった異物の検知・除去を行っている。20以上の出荷先を自動で仕分け、管理することができるほか、撮影されたX線画像は、トレースできるよう長期間保存される。
その他、枝肉庫(冷蔵)では、UVライトによる滅菌システムを導入している。救急車のなかで滅菌剤としても使用されているというUVライトを照射することで、枝肉からバクテリアを除去することができ、賞味期限の延長にも寄与している。
文・食品産業新聞社・畜産日報部 石田氏